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歯並びの種類/開咬(かいこう)
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開咬(かいこう)とは?
開咬(かいこう)とは、上下の歯をかみ合わせたときに、前歯や奥歯の一部または全体が接触せず、すき間ができてしまう不正咬合(ふせいこうごう/悪いかみ合わせ)の一種です。英語では "open bite" ともいいます。
通常、この「開咬」という言葉は、前歯部分に隙間ができる「前歯部開咬」を指すことが多いです。まれに側方歯部が噛み合わない開咬もあります。
前歯や臼歯の位置の異常による「歯性開咬」と、上顎骨、下顎骨の位置や大きさ、形態の異常による「骨格性開咬」、その両方によるものがあります。下顎頭(顎の関節)の異常な吸収、変形により生じることもあります。
当院の上顎前突の治療例
治療前






治療後






症例分類 | 開咬 |
---|---|
主訴 | 物が噛みにくい。上下の前歯が噛み合わないのを治したい。 |
年齢 | 32歳11ヶ月 |
性別 | 女性 |
抜歯部位 | 非抜治療(歯を抜かないでの治療) |
使用装置 | 歯の表側からのマルチブラケットによる矯正装置とi-station装置(アンカースクリューで上顎の歯を後上方に後退させる装置) |
治療期間 | 2年5ヶ月 |
保定装置 | 固定式保定装置(舌側)、舌癖防止型の保定装置 |
費用 | 相談料3,300円、検査料37,800円、診断料21,600、動的矯正治療費669,600円、アンカースクリュー代金32,400円、調節量5400円×31回、保定装置料99,000円 |
リスク・注意点 | 上顎骨に対して下顎骨がより後下方にあり、下方向に回転し骨格の前後的差異が大きく、上下前歯がやや唇側に傾斜しているので前歯が突出して口が閉じにくくなっている。改善には上顎の側方歯をi-station装置を使って後上方に後退させて下顎骨が下方向に回転していたのを戻して、前歯が噛み合うようにしながら前歯を後方移動させて下顎前歯と咬合させ、意識しないでも楽に口が閉じられる位置に前歯を後退させ、口唇圧が作用して前歯が出てくるのを抑制する力が働くようにした。 矯正での歯の移動のリスクとして歯根吸収、歯肉退縮、歯髄壊死が考えられます。上顎前歯が後退して口腔内の容積が小さくなっているので、舌癖を抑え、舌がこれに適応するまでは、舌癖防止形の保定装置の長期の使用が後戻り防止には必要です。 |
開咬の原因
開咬の原因は多岐にわたりますが、主に以下のものが挙げられます。
先天的要因
遺伝や骨格的な要因によるもので、顎の成長バランスが原因となる場合があります。
後天的要因
口腔習癖(悪習癖)
●指しゃぶり・おしゃぶりの長期使用:顎や歯列の変形を引き起こすことがあります。
●舌突出癖:舌が常に前歯を押すことで、歯が前方に押し出され隙間が生じます。
●口呼吸:鼻炎や蓄膿症などで鼻呼吸がしにくい場合、口呼吸が習慣化し、口周りの筋肉のバランスが崩れることで開咬につながることがあります。
●下唇を噛む癖、頬杖、睡眠時の偏った姿勢
歯の問題
●前歯の萌出(生えること)が不十分な場合
●歯の傾斜の問題
●親知らずの生え方が他の歯に影響を与える場合
開咬による問題点・影響・弊害
開咬を放置すると、以下のような様々な問題が生じる可能性があります。
- 咀嚼機能の低下:前歯で食べ物を噛み切ることができないため、奥歯に過度な負担がかかり、奥歯の早期喪失や顎関節症(顎の痛み、音がする、口を開けにくいなど)のリスクが高まります。また、食べ物を十分に噛み砕けず、消化器官に負担をかけることもあります。
- 発音障害:前歯の隙間から空気が漏れるため、「サ行」や「タ行」など、舌先を使う発音が不明瞭になることがあります。
- 審美的な問題:口が閉じにくく、常に口が半開きに見えたり、口元がコンプレックスになることがあります。
- 虫歯・歯周病のリスク:口が閉じにくいため口腔内が乾燥しやすく、唾液による自浄作用が低下し、虫歯や歯周病になりやすくなります。
- 全身への影響:口呼吸になりやすいため、鼻呼吸のように空気のフィルター機能が働かず、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる可能性があります。
開咬は臼歯を早く失う大きな要因に
厚生労働省と日本歯科医師会が推進している。「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」をスローガンとした、8020運動。その達成者の中で『開咬』と「反対咬合」では8020達成者は0%となっています。
開咬の治療方法
開咬の治療には、原因や重症度に応じて様々な方法が選択されます。
ワイヤー矯正
歯にブラケットとワイヤーを装着して歯を移動させる一般的な方法。
マウスピース矯正
透明なマウスピースを段階的に交換しながら歯を移動させる方法。軽度から中等度の開咬に適用されることが多いです。
矯正用インプラント(アンカースクリュー)
小さなネジを顎の骨に埋め込み、歯を効率的に移動させるために使用されることがあります。
口腔筋機能療法(MFT)
舌や唇、頬などの口周りの筋肉の正しい使い方を訓練し、悪習癖を改善する治療法です。特に舌突出癖が原因の場合に重要となります。
外科的矯正治療
骨格的な問題が大きい場合や重度の開咬の場合には、矯正治療と併せて顎の骨を切る外科手術が必要となることがあります。外科矯正は、顎変形症(がくへんけいしょう)と診断された場合、保険適用になります。
開咬は見た目だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があるため、気になる場合は歯科医院を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。